リゾートホテル 八ヶ岳高原ロッジ

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第2回 八ヶ岳高原音楽祭(1989年 9/22〜9/24)
「ポピュラー音楽とクラシック音楽の境界を超えて」 音楽監督:武満徹
公演プログラムより 転載

八ヶ岳と私
ダン・タイ・ソン

私が初めて八ヶ岳を訪れたのは、昨年の9月のことです。折しも土砂降りの雨が降りしきる深夜のことでした。

ピアニストとしての大先輩であり、敬愛するリヒテル氏が音楽監督を務める八ヶ岳高原音楽祭への突然の出演依頼――あわただしい準備を終え、重い楽譜と衣装を抱え、そして複雑な思いを胸にしての到着でした。

 

あくる朝、部屋の窓から眺めた風景は、今でも忘れることのできないほど素晴らしいものでした。木々の緑が乳白色の朝もやのフィルターを通して、幻想的な、そして絵画的な空間を創り出していました。その日の私の演奏会は、その瞬間から始まっていたのでした。

音楽堂のガラス窓の外はふたたび嵐のような天候になっていましたが、数々の名画に囲まれたホールは、まるで波ひとつない湖面のように静かでした。そして、私の右手がピアノの鍵盤に触れると、音の波紋はそのまま自然の中に吸い込まれていきました。

 

八ヶ岳と私の二度目の出会い――、それは今年の7月のことでした。

ヴァイオリンのヨゼフ・スーク氏、チェロの堤剛氏とのトリオで、この高原音楽堂で演奏会を行うことになったのです。おふたりとの共演は昨年のちょうど同じ時期にはじめて実現したのですが、その大成功にすっかり心をよくした私たちは、近い将来にぜひまたどこかの会場で、と固く約束していたのでした。その約束がこの高原音楽堂で、思いもかけない早い時期に現実のものとなったのです。心を通い合わせることのできる友人との再会、そしてすっかり気に入ってしまった八ヶ岳の自然との再会は、私の心にいつまでも強く残るものでした。演奏のほうも期待通りの素晴らしいもので、その後のパーティでのワインは、久しぶりに心地よい酔いへと、私を誘ってくれました。

 

私のこれまでの日本での滞在は、すべて都会の演奏会場とホテルとを渡り歩く毎日でした。いまはじめて2年間という長期にわたって日本に滞在しています。その間に気づいたいくつかの事柄のなかに、自然と人々との接し方の違いがあります。ヨーロッパでは、人間と自然は隣同士の関係で生活しています。しかし日本では、ふだんの生活のなかで自然を意識したり、自然と対話することはなかなか難しいことのようです。また、日本の人々は概して、日常と非日常との区別をはっきりさせることが、あまり上手だとはいいかねるようです。

 

八ヶ岳には、そこを訪れるすべての人を日常生活から解放してくれる雄大な自然と、そして自然を損ねない控えめな、それでいて十分な施設が整っています。自然と音楽を愛するすべての人々にとって、八ヶ岳は最高の条件を備えたリゾート地のひとつであるといえます。私が八ヶ岳を愛してやまない最大の理由も、その点にあります。この素晴らしい高原音楽堂に集う人々自身によって、これからも新しい「八ヶ岳の文化」が創造され続けてゆくことを願ってやみません。

 

私と八ヶ岳の三度目の出会いがどのような形で実現するかは、わかりません。しかし、その瞬間を私は心から楽しみにしています。

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