リゾートホテル 八ヶ岳高原ロッジ

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アーティストの素顔 vol.5

このコンサート
を、
聴いてください。

近年、八ヶ岳高原音楽堂は様々なジャンルに挑戦していますが、音楽堂は、なんといってもクラシックホールです。私達には、皆さまに一流のクラシック音楽を届け続けたい、という変わることのない思いがあります。
今夏、巨匠・ゼルキンを11年ぶりにお迎えします。涼風に吹かれ、音楽堂の真骨頂であるクラシックの響きをお聴きください。
コンサート担当

ピーター・ゼルキンを堪能し尽くすための、3つのストーリー。

■ ピアノを辞めた巨匠。

ゼルキンは、ピアニストとしてのキャリアの絶頂期に、演奏活動を辞めたことがあった。24歳の時だ。

天才的音楽家系に生まれ、10代頃から世界の第一線で活躍を始めたピアノ界のサラブレッド。
しかし、世界の檜舞台で活躍し、グラミー賞を受賞した絶頂期に、なぜか突如、音楽を演奏することを辞める決意をする。あまたのオファーを断り、メキシコの田舎町に妻と娘と引っ越してしまった。
世界の舞台で歓声を受けてきた才能溢れるエリートが、拒絶した音楽家の道。その落差を受け入れるほどの思いが、その時のゼルキンにはあったのだろう。
しかし、運命はゼルキンを、ピアノへともう一度引き戻す。
8ヶ月が過ぎたある日曜日の朝。隣家のラジオから偶然聞こえてきたのは、バッハの音楽だったという。
その音楽を聴いているうちに、「やはり僕は演奏するべきなのだ、という気持ちが、触知できるほど明らかになっていくのが分かった」と彼は言う。
そして、彼はその思いに従い、受け入れ、アメリカに戻り改めて音楽家となった。
この逸話を聞くとき、私はピーター・ゼルキンの背負っていた偉大な〝影”に思いを馳せる。

■ ピーターと、偉大すぎる父・ルドルフ。

“ゼルキン”の名をきいて、浮かぶのはピーターだろうか、それとも父のルドルフだろうか。
それほど、ピーター・ゼルキンの父、ルドルフは歴史的に偉大なピアニストである。そして、祖父はドイツの名ヴァイオリニスト、アドルフ・ブッシュ。ピーターは、天才的な音楽一家に生まれ育った。
多くの二世が背負う、偉大すぎる父親の〝影“と、ピーターはどのように向き合ってきたのだろうか。

ピーターは早くからその才能を開花させた。
10代でジョージ・セル率いるクリーヴランド管弦楽団や、ユージン・オーマンディ率いるフィラデルフィア管弦楽団と共演。19歳で、グラミー賞最優秀クラシック・アーティスト新人賞を受賞。絵に描いたような順風満帆なピアニスト人生。
しかし、尽きることのない偉大すぎる父との比較。父の〝影”を追い払うがごとく改進をしているかのように見えたが、実際は違った。常に後ろにある〝影“の偉大さが、彼を迷わせ、苦しめた。
彼がいかに父親を意識していたかは、演奏にもあらわれている。ピーターの演奏スタイルは、父ルドルフとは全く違うものである。思慮深く、繊細で、それでいて独特だ。
かの吉田秀和氏が評論で、〝ピーター・ゼルキンが、こうなりたいと思うのでなく、こうなりたくないと思って、自分がどういうピアノを弾くべきかを探すことは、とても困難なことだろう“と残している。
そうして、24歳の時にピアノを辞めてしまった。幸運にも音楽の神に引き戻されたピーターだが、もちろんそこには変わらず父がいた。その後、ピーターはどう巨匠への道を切り開いたのだろうか。

■ ピーターと、バッハ。

多くを語らないピーターの軌跡を、私達が想像し得る鍵は、バッハだ。
今回演奏される、ゴルトベルク変奏曲。ピーターはこの曲を3度もレコーディ ングしている。この曲を3度も録音しているピアニストは、チェンバロ演奏を別 にすれば、ほとんどいない。思い入れの強さがわかる。
そして、偉大な父の影を受け入れ、自由な〝ピーターらしさ“を照らしだした のも、このゴルトベルクだった。1994年の3度目の録音。1度目(17歳・1965年)と2度目(39歳・1986年)の録音とは明らかに違う。1994年は、偉大な父ルドルフが世を去って、3年すぎた年。「3年」― 偉大で最愛の父の死を受け入れ、演奏が変化してくるには絶妙な年月である。
そこには、華麗な響きや技巧を尽くした装飾音も、奇をてらったしかけもない。以前のレコーディングに比べ、より内省的で、優しい感情に満たされ、ピーター独特の音の対話を聴くことができる。ピーターは呪縛から逃れ、全てが浄化されたかのような、穏やかさをもってピアノに対峙していた。
ピアニストへの道へ引き戻してくれたバッハ。そして、父の〝影“との変遷が音色から読み取れるゴルトベルク変奏曲・・・。
彼のバッハの一音一音には、彼でしか背負いきれなかった軌跡が刻まれている。
今年70歳、円熟の時を迎える巨匠の、音楽堂でのゴルトベルク。人生から紡がれる極上の響き。期待せずにはいられない。

CONCERT INFORMATION

ピーター・ゼルキン ピアノリサイタル

■7月29日(土)
■16:30開場/17:30開演
■コンサート料金:12,300円
■プログラム:モーツァルト:アダージョ K.540、ピアノ・ソナタ第17(16)番 変ロ長調 K.570
       J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲BWV988


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